焼肉の開業について

焼肉屋は、「ガッツリ食べたい」ときに行きたくなるお店です。牛肉をめぐる問題が発生し、一時期は低迷した業界ですが、それからかなりの年月が流れ、もうその頃のイメージはありません。やはり「お肉と言えば焼肉」ですから、焼肉は市場自体が一定の安定感を持っているといっていいでしょう。
この記事では、焼肉屋を開業するに当たり重要なことについて解説していきます。焼肉屋の開業をお考えの方は、読んでいただければ幸いです。

焼肉屋の形態

近年、焼肉屋で目立っているのはフランチャイズです。フランチャイズに加盟し、フランチャイズが持つノウハウを利用して焼肉屋を運営します。すでにビジネスとして収益を上げているそのノウハウが手に入るわけですから、飲食店を運営した経験がない方でも、店を成功に導ける可能性は高いといえます。ただ、運営の自由度は低いので、自分好みの店が作りたいという方には不向きです。

フランチャイズに加盟しないのであれば、独立して店を運営します。店舗、メニューなど、ゼロからのスタートとなりますが、作り上げる喜びは大きく、アイデアを自由に形にすることが可能です。

焼肉屋を開業するための資金

焼肉屋を始める場合は、居酒屋やバー、ラーメン屋などを始める場合よりも多くの資金を必要とします。そのため、焼肉屋の開業を考えるのであれば、まずは十分な資金を用意することが大切です。焼肉屋を開業するには、ほかの飲食店同様、店舗、厨房機器、内外装工事にお金がかかるほか、開業後の人件費、集客のための広告宣伝費を考慮する必要があります。

焼肉屋を開業するとなると、一般的にはラーメン屋の倍程度のスペースが必要になるでしょう。40坪ほどの物件で、家賃80万円程度を目安に考えると、保証金は10ヶ月分として800万円程度になります。これに内外装工事のお金がプラスされます。内外装工事は、あくまで相場ですが、40万円/坪程度なので、これだけでも1600万円。焼肉屋をスケルトン物件で始める場合は、2000万円以上はみておく必要があるでしょう。

焼肉屋の場合は、箱の大きさもあるため、どうしても従業員を雇う必要が出てきます。プロ用の厨房機器は高価ですから、少しでも費用を抑えるのであれば、中古の厨房機器やリースを利用するとよいでしょう。

どんな焼肉屋にするのかしっかりイメージする

焼肉屋はイメージ戦略が非常に重要です。この業界はライバルが多いため、他店との差別化を図り、店の存在を消費者に知らしめなければなりません。そのため、ライバル店を知ることはとても大切です。

出店を予定しているエリアにある人気の焼肉屋は、真っ先にチェックすべきです。その店の焼肉を実際に食べてみて、人気の理由を検証してみましょう。メニュー、顧客層、内外装、衛生状態などについてもしっかりチェックします。顧客層は、曜日や時間により異なる可能性があるので、何回かかよってチェックしましょう。

そのほか、ライバル店で気づいたことはメモしておきましょう。ライバル店を分析して、どうすれば消費者を呼び込めるのか考え、それを店のイメージやメニューに落とし込んでいきます。

自己資金と資金調達

焼肉屋を開業するためには、すでにご紹介したとおり、少なくとも2000万円は開業時に用意しておく必要があります。このお金は、開店のためのお金と、当面の運転資金に充てることになります。しかし、これだけのお金をそろえるとなると大変です。
そこで資金を調達するために日本政策金融公庫などを利用しますが、ここで重要になるのが自己資金です。自己資金がないと、日本政策金融公庫にしても、ほかの金融機関にしても、相手にしてもらえません。2000万円が必要な場合は、400~500万円を自己資金として用意する必要があります。
自己資金は豊富であればそれに越したことはありません。ただ、目安としては資金総額の3分の1程度を自己資金で用意できればよいでしょう。

食品衛生責任者の資格を取得する

焼肉屋などの飲食店を開業する場合は、食品衛生責任者の資格が必要です。調理師などの資格は、特に必要ありません。食品衛生責任者の資格は、講習を受講するだけで取得できます。これがないと営業許可を申請できませんので、保健所に行く前に必ず講習を受けておきましょう。

食品衛生責任者と営業許可以外には、24時以降に営業する場合に深夜酒類提供飲食店開始届、30人以上のキャパシティを持つ店の場合は防火管理者の講習を受ける必要があります。

焼肉屋は設備が独特

焼肉屋は、ほかの飲食店とは異なり、設備が独特です。多くの焼肉屋のテーブルには、無煙ロースターやダクトなどの設備が整っていますが、焼肉屋以外ではあまり見かけません。独特なので、やはりある程度の費用がかかり、無煙ロースターは1台設置すると20万円程度必要です。ダクトもテーブル当たり10万円程度はかかるので、焼肉屋はインテリアや設備を整えるのにかなりのお金がかかることがわかっていただけるでしょう。

焼肉の場合、テーブルでお客さん自身が調理しますが、すべてではないので、店の規模に応じた広さの厨房は必要です。すでにお話ししたとおり、厨房機器を新品でそろえるとなると非常に高価なので、どうしても出費を抑えたい場合は、居抜き物件の中から店を選びましょう。

オリジナリティを出すためにすべきこと

焼肉屋はライバル店との差別化が重要だというお話をしましたが、この差別化をもっともわかりやすい形で行えるのがメニューです。

オリジナリティあふれるメニューを用意することは、ライバルとの違いを鮮明にする鍵になります。「牛肉のランク」「オリジナルのタレ」「サイドメニュー」など、違いを作れる要素は豊富にあるので、ライバル店の研究だけではなく、食材やメニューを工夫することにも力を注ぎましょう。

最近の焼肉シーンは、「高級焼肉」か「リーズナブルな焼肉」かという2つの選択肢になりつつあります。「安くてうまい」は消費者にとってはうれしいことですが、ここでターゲットになるのは仕事帰りのビジネスマンです。グループで来店する場合が多いという特徴があります。
高級肉の場合は、接待のニーズが多いという傾向があります。食肉業者などの肉のプロフェッショナルと交流することにより、肉や食材について突き詰めることも、焼肉屋を始めるうえでは重要になるかもしれません。そのほかにファミリー向けの郊外型焼肉屋もありますが、こちらはある程度の規模が求められます。

従業員教育

小さめのラーメン屋のように、ひとり、もしくは家族の手を借りて店を運営できればよいのですが、焼肉屋の場合はなかなかそうはいきません。店舗もある程度の大きさがあり、ロースターなどの準備も必要なため、どうしても従業員を雇う必要があるでしょう。

焼肉屋の場合、生のお肉を出すので、従業員に食品の衛生、安全についてしっかり教育しておかなければなりません。そのため、開業の数週間前から教育ができるよう、募集は開業の1ヶ月ほど前から始める必要があります。また、従業員教育を始める前に、マニュアルを整備しておくことも重要です。重要事項だけでもまとめておかないと、開店してから従業員の面倒をみる羽目になってしまいます。

焼肉屋は、比較的、開業に当たり費用がかかります。ライバルも多く存在しますが、うまく差別化を図ることができれば、成功をつかめる魅力的な市場でもあります。リサーチを含めて準備をしっかり行い、焼肉屋を成功につなげましょう。